Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

干物


アパートに帰りつくとすぐにそのままベッドに
寝転がった。
この一ヶ月の事がさまざまに浮かんでくる。
思いはさゆみの事だけだった。
結局、来る13日にやってくるさゆみの運命は具体的には
ほとんどわからないままだった。

耳の後ろに手をやった、
埋め込まれているという超小型発信機の感触は無かった。
直径一ミリというから、別に違和感も無かった。
他人にブリードビルやさゆの事を話すつもりは無いから
気にしない事にした。


ふと、光男の事が思い出された、ことによると接触
はかってくるかもしれない。
会話を発信機によって盗聴されるのだから、その時は
何か考えなくてはいけない。


翌日の早朝、起き出すと外に出かけることにする。
ブリードビルに通ってる頃は、毎日豪華な食事にありつけたのだが、
今は、食べ物を自分で調達しなくてはいけなかった。
幸い、報酬として貰った金貨がある。

表向きは食糧はすべて配給となっているが、そこはそれ、
闇市場というものが存在している。
地方の農家や漁村などから野菜や魚介類を運んできて
早朝にアパートの裏などで売っているのだ。

売っていると言っても、円という通貨は今は無価値になっていて
物々交換が主流なのだが、
その他、貴金属の金銀や宝石などが通貨の替わりになっている。

闇市が開いている場所に行って見ると、いくつかの
店が開いていた。
並べられているのほとんどは食べ物で、ジャガイモ、サツマイモ
カボチャなどが並べられている。
魚介類は、塩なども不足しているので干物が多かった。
鰯、鯵などやイカの干物が並んでいる。


それらの物を買い求める人達は、主に洋服などの衣類や
下着、靴下などの生活用品などを持ち寄って食べ物と交換していた。
中には、円の札束を示す人もいたが、まったく相手に
されなかった。

見ていると、腕時計を出して交換しようとする人がいた、
売主は、その時計を調べていたがジャガイモを三個ほど包んで
寄こした。

時計を出した男は不満そうな声を上げた、
「何だそれっぽっちかい、この時計は何百万もしたんだよ!」

売主はそっけなく、
「今はいくら高級時計でも安いんだよ。昔ならいざ知らず、
今の世の中は、正確な時間がわかっても腹の足しにならんよ」
男は諦めてジャガイモを受け取った。


店の前に立つと、ジャガイモにイカと鯵の干物を指差した。
売主はじろりと私の顔を見た、
Gパンのポケットから金貨を一枚取り出して渡した。

売主はその金貨をしばらく手で触っていたが、最後に歯で
噛んで確かめると、うなずいて籠に山盛りのジャガイモと
イカと鯵の干物を合わせて十本ほど寄こしてくる。

その他に大きめのキャベツもつけてくれる。
持ってきたリュックにそれらを詰めると背負う。
これだけあれば当分は食いつないでいける。

帰ろうとした時、呼び止められて振り返ると、
帽子を深く被った男が目に止まった。
光男だった。