Dark blueの絵日記

ハロプロ関連の記事が主。後は将棋と猫を少々

クローンの休日


観覧車はついに頂上に達した。


はるか下に見える地上の風景を眺める
ことなぞ、とても出来ない。
恐怖のため、思わずリカを強く抱きしめた。
リカはそんな俺の気持ちを知っているのか、
うっとりと俺の肩に顔をもたせかけている。


気がつくと、すぐ目の前にリカの顔がある、
リカの吐く息が肌に直接感じられる。
心臓がドキドキしてきた、果たしてそれは
高所恐怖症のためか、リカのせいなのか、
わからなかった。
リカの吐く息は、甘かった。
それは、さっきまで食べてたソフトクリームの
せいなのだけど。


ようやく、観覧車は地上近くまで降りてきた。
そこまで降りると、外の景色を見る余裕が
出てきた、
ふと、気になる人物が目に止まった、
それは、黒い制服を着た3人の男達だった、
見覚えのある者だったし、忘れる事の出来ない
あの日の出来事とかさなっていた。


観覧車を降りると、リカの手を引いてその男達の
後を追った。
その3人は、がっしりとした体格で黒い制服は
遊園地の中ではやけに目立つので、追うのは
楽だった。


3人の男達は、キッチンズ・バーガーの
屋台の前に立ち止まった。


「いらっしゃい〜3人様ですね〜」


と、声をかける紺野。
それを無視して、男のひとりが言った、


紺野あさ美さんですね」
「はい・・・?」
その男は、書面を出して切り出した。


「我々は委託されて、クローン人間を引き取りに
来た。紺野あさ美(クローン人間)。我々におとなしく
従うように」
と、宣言する。


リカが強く俺の手を握ってきたので、振り返って
見ると、リカの顔が恐怖で歪んでいた・・・、
リカも、あの日の事を思い出したようだった。
あの別れの朝の事がまざまざとよみがえって
来る。 



ひとりの男が屋台の中に入り、茫然と立っている
紺野に近づいて、その腕をつかまえた。
残りのふたりは、油断無く屋台の前に陣取っている。
俺の中に、沸々と怒りが湧き上がってきた、
このまま、クローン紺野を連れて行かせるわけには
いかない。


その時だった、小っちゃな茶髪の女の子が
両手にソフトクリームを握って現れた、
クローン・マリリンだった・・・。


「ソフトクリーム、いかがですか〜」
男達は無言で無視する。


いきなり、マリリンは思い切り腕を伸ばして
ソフトクリームを男の顔面に、ベチャッ!と
押しつける!
続いてもうひとりの男の顔面にもソフトクリームを
押しつけ、ぐりぐりとこねくりまわす!
不意をつかれて、顔面をクリームだらけに
なりながらも、男達はマリリンを捕まえようとする、


すると、リカが屋台に置いてあった、赤い容器の
ケチャップと、黄色い容器のマスタードを両手に
つかむと、
マリリンの腕をつかまえた男達の顔に
勢いよく振りかける!
ふたりの男達の顔面は、
赤いケチャップと黄色いマスタード、それに
白いソフトクリームが入り混じって悲惨な
面相になる。
マスタードを顔面に受けた男は、目に入った
マスタードに、うめき声を上げる、


もうひとりの男が、ケチャップだらけになりがら、
リカの腕をつかまえた、
暴れるリカを押さえ込もうとする。
マリリンがリカからマスタードを受け取ると、
後ろからその男の頭からマスタードを振り掛ける。
リカは、マスタードにひるんだその男の腕に
がぶりと噛みついた、
男は、痛みでうめき声を上げる、
その男は、前にもリカに噛みつかれた男だった。


俺は大立ち回りを演じるマリリンとリカを横目に、
クローン紺野を助けに屋台の裏に向かうと、
残るひとりの男が紺野の手をつかまえて、
屋台から出てきた、
俺はその前に両手を広げて立ちふさがった。


その男は、俺の顔を見て何かを思い出したようだ、
そして、大暴れしているリカを見て納得したようだ。
「怪我をしたくなかったらそこをどけ!
もう、お前らには用は無い!」
「そっちに無くても俺たちにはある!クローン紺野を
連れて行かせるわけにはいかない」
男は紺野の手を離すと、両手を広げて威嚇しながら
俺に向かって来る、


そのがっしりとした体格から、たぶん元格闘技の選手らしい、
そいつは俺の両肩を、がっちりと掴むとものすごい握力で
ぎりぎりと締め出す、
俺はその激痛に息も出来ずに悲鳴を上げかけた、


その時、男の後ろで紺野がフライパンを
振り上げるのが見えた、
そして思い切り男の後頭部に叩きつける!


コーンッ!!と鈍い音がしてさすがに男も頭をかかえた、


俺はその隙に思い切り男に体当たりをした、
男が尻餅をついたとき、またも紺野がフライパンを
男の頭にコーンッ!!と叩きつける。


その時、キッチンズ・バーガーのユニフォーム
を着た男が走ってきて、その場の惨状に、


「アルバイト紺野!この有様は何なんだ!!」
紺野が、
「あ〜!後藤主任!」
すると、リカが、
「あ〜!ごっちんでちゅ〜!」
俺は彼を見て、
「違う!イケメンだけど、ごっちんじゃない!」


男達が起き上がって来る、


「とにかく、早く逃げるんだ!!」
俺はリカの手を取ると、紺野とマリリンに言った、
マリリンが紺野の手を取ると、一緒に走り出す、
俺とリカも、ふたりとは別方向に走り出す、
懸命に走りながら、振り返って見ると、


男達が追いかけて来るのが見えた、